創業75年の歴史を持つ株式会社精密スプリング製作所。長年培ってきた技術と品質を守りながら、DXによる業務改革、若手人材の育成、新たな製造分野への挑戦を続けています。

その変革を支えているのが、異業種での経験を経て家業に飛び込んだ次世代リーダーたちです。

未経験からの挑戦、現場改革で直面した壁、失敗から学んだ組織づくり。そして、これからの製造業をどのように変えていきたいのか。

これまでの歩みを振り返りながら、社員やお客様への想い、そして精密スプリング製作所が目指す未来について語ってもらいました。

 

変革を支える二人のリーダー

精密スプリング製作所が目指すのは、長年培ってきた技術を守りながら、一人ひとりが挑戦し、成長できる会社です。

その未来を切り拓く二人の常務取締役について、これまでの経歴や大切にしている価値観を詳しくご紹介しています。

常務取締役 濱田 崇志
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常務取締役 濱田 洋輔
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これまでの歩みと転機

入社から現在に至る中で、自身のキャリアにおける最大のターニングポイントは何ですか?

【濱田崇志】

最大のターニングポイントは、家業である株式会社精密スプリング製作所への入社です。
それまで6年間、工作機械メーカーの調達課および経理部門で積んできたキャリアを一度手放し、
営業・管理畑の出身でありながら製造の中枢である生産技術課へ飛び込むという、ゼロからの再出発でした。
最も困難だったのは、設計から量産治具の作成に至る一連の現場業務の習得です。
設計知識が全くない状態からのスタートだったため、熟練の設計士の自宅にパソコンを持ち込み、深夜まで指導を仰ぎながら必死で技術を身につけました。
もう一つの難関が、組織風土の改革です。
当時の生産技術課は製造の中核部門でありながら、チームではなく個人単位で個々に動いている状態でした。
職人気質の強い社員一人ひとりの意識を変え、組織として機能させていくプロセスには非常に大きな苦労を伴いました。

【濱田洋輔】

2020年、コロナ禍を機に銀行から家業へ戻ったことです。
銀行では5年間、法人のお客様の融資を担当していました。正直に言うと私は事務仕事がとても苦手で、毎日、自分の適性のなさと向き合っていました。
ただ、途中で外回りの営業に出ることになり、この仕事が好きになりました。
20代で地域の会社の社長と資金繰りや設備投資の話を正面からさせてもらえる職業は、銀行員くらいだと思います。
その後、社長(父)から声をかけられ、製造業の経験ゼロで入社しました。
最初に思ったのは「なぜこんな無駄なことをやっているのだろう」ということです。
とはいえ、入ったばかりの人間が「これ、無駄ですよね」と言えるはずもありません。現場には現場の歴史とプライドがあります。
しばらく様子を見た後、腹をくくって現場改善に取り組み始めました。そこが本当の転機でした。

その困難をどのように乗り越え、それが現在のマネジメントスタイルにどう活きていますか?

【濱田崇志】

調達や経理で養った「会社全体を俯瞰する視点」を活かし、ゼロから現場を学び直すとともに、常に現場を巻き込みながら改善を進めてきました。
その軸にあるのは、「信頼関係を築いて周囲を巻き込む」マネジメントです。
自ら責任を背負い、先頭に立って行動することを何よりも大切にしています。

【濱田洋輔】

うまくいかなかったことのほうが多いです。
一番大きいのは、DXツールを3つ開発したものの、どれも使いこなせずに形骸化させてしまったことです。
原因を突き詰めると、問題はシステムではなく人材教育にありました。良い道具を導入しても、使う人の業務プロセスが変わらなければ意味がありません。
業務基準が文書化されている工程はDXが進み、基準のない工程では進まない——この現実を何度も痛感しました。
また、人への接し方でも失敗しています。「なぜできないのか」と相手を追い詰めてしまったことがありました。
しかし、できない原因は本人の能力ではなく、タスクの切り分け方にあったというのが今の結論です。
そのため現在は、完全自動化にこだわりすぎず、あえて一部に手作業を残すようにしています。
そのほうが現場の反発が少なく、結果としてスムーズに定着するからです。

組織・人材育成への想い

自社のメンバーや組織の「強み」はどこにあると感じますか?

【濱田崇志】

私たちの強みは、創業75年で積み上げてきたばねの製造技術と、その高い品質保証体制を応用した溶接・板金事業という、
二本柱の事業展開で幅広く製造業を支えていることです。
本社工場では自動車Tier1メーカー向けのスプリングをJIS1級以上の精度で年間1億個以上生産し、不適合0件を維持しています。
この品質管理の仕組みを西大寺工場の溶接・板金事業に展開した結果、「金型なしで複雑な3次元形状を量産化する」という技術が生まれました。
自動車から農業機械、重電、建設機械まで、身近な機械の基盤を支えていることが組織の最大の強みです。
そしてもう一つ、20〜30代が約55%を占める若い組織であることも強みです。
若い力でDXも現場改善も推進できるスピード感は、75年続いてきた老舗ならではの「重厚さ」と若さの「軽快さ」を兼ね備えているからこそ実現できています。

【濱田洋輔】

ばね、板金・レーザー加工、溶接・組立Assyの3事業を自社内で一括保有している点です。
当社は「スプリング製作所」という社名のため、ばね専門と誤解されがちですが、実際は曲げ・溶接・設計・調達・組立・検査までワンストップで対応可能です。
工程ごとに他社へ発注・移送する手間がかからず、リードタイムを大幅に短縮できます。
また、線径0.1mmクラスの極細ばねから年間1億個規模の量産まで、試作から量産までを同一工場内で完結できる点も強みです。
組織面では平均年齢32.4歳と若く、実績次第で24〜25歳の若手が係長に抜擢されるなど、昇進の速さが大きな特徴です。
さらにDX領域では、年次に関係なく知識のある若手がベテラン社員を指導する文化が定着しつつあります。

今後、どのような人材と一緒に働き、育てていきたいと考えていますか?

【濱田崇志】

主体性を持った人材と一緒に働き、育てていきたいと考えています。
当社は動画マニュアルやRPA、AIの活用によって教育工数を約50%削減しました。DXやAIを駆使することで、未経験でも製造ができる時代になっています。
だからこそ求めているのは、入社時の知識量ではなく「まず自分が動いてみる」という主体性です。
私自身、設計知識ゼロで生産技術課に配属され、設計士の家にパソコンを持ち込んで深夜まで学んだ経験があります。
道を開くのは学歴や経験ではなく、自ら動き続ける力であると実体験として実感しています。
若手のうちから中核部門の責任を任せる実践型の環境で、挑戦する人と一緒に成長していきたいです。

【濱田洋輔】

特別な技能を持つ人材だけを求めているわけではありません。
業務プロセスの標準化を進める中で、製造業には未経験者でも確実に対応できる工程が数多く存在することが分かってきました。
得意なことが1つでもあれば、それを存分に活かせるポジションが必ずあります。
実際に、就労継続支援B型事業所と連携して現場の一部作業を委託したところ、品質が安定し、人手不足だった工程を円滑に回せるようになりました。
これはCSR(社会貢献)としてではなく、現場を第一線で支える貴重な戦力としての取り組みです。
人材育成においては、精神論に頼らず「仕組み」で育てていきたいです。
かつて「一人前になるまで3年」とされていた世界を、詳細な手順書と徹底した標準化によって短縮していく。
そうした現場の仕組みづくりや変化そのものを面白がれる方と一緒に働きたいと考えています。

未来への展望・ビジョン

今後、会社全体を通じて達成したいビジョンをお聞かせください。

【濱田崇志】

「わくわく・ドキドキ」してもらえる、魅力ある会社をつくることです。
そのために、三つの「わくわく」を用意したいと考えています。
①働く社員が「やりたい」を実現できるわくわく(若手が中核を担い、挑戦を歓迎する組織風土)
②お客様が「この会社なら任せられる」と感じるわくわく(1個から1億個まで対応可能な、共同開発からの量産)
③地域と社会が未来を感じられるわくわく(EV・バスバーへの挑戦や、エコアクション21による持続可能な会社づくり)
創業75年で積み上げてきた「技術・信頼・努力」を土台に、次の75年に向けた魅力ある会社へと進化させることが、私たち次世代の使命だと考えています。

【濱田洋輔】

「特別な人にしかできない仕事を、誰にでもできる仕事に変える」ことです。
技能継承は多くの中小製造業における共通の課題ですが、職人の頭の中にあるノウハウやコツを写真や動画を用いてマニュアル化し、
紙の作業指示書にQRコードを印刷して現場のスマートフォンから即座に参照できる仕組みを構築しました。
こうした地道な改善の積み重ねによって変えられる部分は確実に存在します。
なお、この取り組みは「全国ワークスタイル変革大賞2024」にて最優秀賞を受賞いたしました。
今後の展望として、当社が持つ「ばね・板金・溶接の一貫対応」という強みを、標準化された確固たる仕組みの上で安定運用できる状態を目指していきます。
担当者が替わっても品質が変わらない組織こそが、最終的にお客様へ最も高い安心と価値を提供できる会社だと確信しています。

変化の激しい業界の中で、今後新たに挑戦していきたい領域はありますか?

【濱田崇志】

1つ目は、EV・電池分野への本格参入です。
フォーミングマシンを応用した次世代バスバーの加工において、大学と共同研究を進めています。
Cu/Al複合材という新材料に、エッジワイズ曲げなどの独自工法を掛け合わせ、産学連携の研究成果を「量産」まで届けたいと考えています。
EV・再生可能エネルギー市場において、当社の技術が動かす領域を広げていきます。
2つ目は、「未経験でも製造ができる」仕組みの深化です。
動画マニュアルやRPAの活用により残業30%削減・教育工数50%削減を実現してきましたが、次はAIを活用して「機械が人を育てる」教育モデルを進化させたいと考えています。
人手不足の時代において、製造業の本質的な答えになり得ると考えています。
3つ目は、共同開発設計の領域拡大です。
お客様との共同開発において最優秀賞をいただき、コアTier1にも選んでいただきました。
この「設計段階から伴走する」力を、スプリング・板金の枠を超えて、新しい業界・新しい顧客へ横展開していきます。

【濱田洋輔】

1つ目は、自社で実践してきた製造業DXを、他の中小製造業でも再現・活用できる汎用的な仕組みとして外部へ展開していくことです。
同じ悩みを抱える企業は地元・岡山県内にも非常に多く、実際に多くのご相談をいただくようになりました。
2つ目は、「福祉」と「製造業」のさらなる接続です。
私自身、就労継続支援B型事業所「ここぷれ」の代表も務めており、人材を送り出す福祉側と、それを受け入れる企業側の双方の視点を備えています。
業務工程を細かく分解し標準化さえできていれば、現場の担い手の可能性は大きく広がります。
人手不足を単なる「採用活動」だけで解決しようとするのではなく、「仕事(タスク)の切り分け方」によって解決する——このアプローチを、
今後はAIの活用なども含めて広く社会に発信・浸透させていきたいと考えています。

ステークホルダー(顧客・求職者)へのメッセージ

お客様やパートナー企業へ向けて、自社が提供できる一番の価値は何ですか?

【濱田崇志】

「設計段階から伴走し、試作から量産までを一気通貫で任せられること」です。
具体的には、三つの約束ができます。
①1個から年間1億個まで、ロットの大きさに左右されない対応力
②JIS1級以上の精度と不適合0件を維持する品質保証
③金型なしで複雑な3次元形状を量産化する技術力——プレス工法比でイニシャルコスト50%以上削減、工程工数50%削減を実現しています。
加工から溶接、組立ユニットまでワンストップでお届けします。
主要取引先様より品質管理の認定工場として長年評価いただき、安定調達への感謝状やサプライヤー最優秀賞をいただいていることが、この価値の証明です。
「図面が描ける前から、一緒に考える」——それが私たちの一番の価値です。

【濱田洋輔】

「この形、つくれますか?」という、図面が固まる前の構想段階からご相談いただけることです。
当社は社名の印象からばね専門と思われがちですが、現在特に力を入れているのは溶接・組立Assy(アッセンブリ)と板金・レーザー加工です。
ばねから板金、溶接、組立まで自社内で一貫対応できるため、工程ごとに他社へ発注・移送する手間がかからず、リードタイムを大幅に短縮できます。
また、専用金型を使わずに複雑な3次元形状を成形する加工技術も当社の強みです。
初期投資を抑えられるだけでなく、急な設計変更にも柔軟かつスピーディに対応できます。
1個の試作から年間1億個規模の量産まで、同一工場内で一元管理して完結できること——これこそが、当社が提供できる最大の価値だと確信しています。

会社に興味を持っている求職者・または若い世代の社員へメッセージをお願いします。

【濱田崇志】

私自身、6年間勤めた会社でのキャリアを一度手放し、設計知識ゼロのまま生産技術課へ飛び込みました。
これまでの社会経験から断言できます——入ってからの努力と環境で、人は必ず成長します。未経験は何のハンデでもありません。
当社は20〜30代が約55%を占める若い組織です。入社数年で中核部門の責任を任されるなど活躍の場が広く、
動画マニュアルやDXの整備が進んでいるため、属人的な研修ではなく仕組みで成長を支える環境も整っています。
農機も自動車も建設機械も——その心臓部に、私たちの作った部品が入っています。岡山で、自分の技術が地域のモノづくりを動かす実感を得られる仕事です。
「あなたの技術を、岡山のモノづくりの力に。」まずは工場見学に来てください。挑戦したい人を、全力で歓迎します。

【濱田洋輔】

私自身、かつては事務仕事が苦手な銀行員であり、製造業の経験もゼロの状態で当社へ入社しました。
それでも現場で実績を重ね、現在はDXという全く新しい領域を任されています。仕事の向き不向きは誰にでも存在しますが、
それは「タスクの切り分け方」や「仕組みづくり」によって十分に克服できるというのが私の実体験に基づく持論です。
当社の平均年齢は32.4歳と若く、実績次第で24〜25歳の若手が係長に抜擢されるなど、意欲を持って手を挙げた人に早くから挑戦権を与える風土があります。
またDX推進の現場では、年次に関係なく知識のある若手がベテラン社員を指導する場面も当たり前のように生まれています。
得意なことが1つでもあれば、それを存分に発揮できる場所が当社には必ずあります。
まずは一度、私たちの工場を気軽に見学しに来てください。

精密スプリング製作所の取り組みと、未来をともにつくる働き方をご紹介します